世界の臭い

海外で働くと、日本のお客さんの質の高さが身にしみてよくわかる。

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ロンドンのアパレルで1年半働いていたこともあり、日本の洋服屋に行くたびに店の状況をチェックしてしまう自分がいるのだが、日本人は洋服を手に取り、まあまあ綺麗に元にあった場所に戻すことに気づく。パック詰めにされたシャツを試着したい時、横に試着用のサンプルが用意されていたら当たり前のようにそのサンプルを試着するのが日本人である。

しかし海外の常識は違う。海外では手にとった商品をどこかへ持って行き、他に欲しい商品を見つけてしまおうものなら、必要のなくなった商品はその場に投げ捨てられる。おそらく手に取った商品を元の場所まで戻しにいくという、我々日本人にとっては当たり前の発想がないのだろう。

また、勝手にパックを開けて試着する人がたくさんいる。すぐ横に試着用のサンプルが用意されているにもかかわらず、次々とパックを開けていくのだ。そのおかげで、閉店後はめちゃくちゃにされたシャツたちを丁寧にたたみ、パックに戻すという大変な作業が毎日のように繰り返された。週末にもなると一晩で数百着くらいたたんでいたこともあった。

洋服屋で働くということは、そういうことなのだろう。ましてやロンドンでも指折りのショッピングストリートにある大型店ともなれば、これが当たり前のことなのかもしれない。だからこれに関しては一切文句を言うつもりはない。

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フィッティングルームという記事で「臭い」について書いた。

洋服を試着するときに靴を脱ぎ、その靴の中から鼻がへし折れるくらいの悪臭が放出され、その臭いが充満したフィッティングルームを次に使う人が吐きそうになりながら助けを求めてくるという話。

世界というものは広いもので、日本では考えられないほど臭い人がいるのだ。こればかりは世界に行ってみないとわからないことだろう。日本で嗅ぐことのできる臭いなんて、せいぜいブーツを脱いだときに放出される納豆臭くらいだろう。僕がフィッティングルームで嗅いだ臭いも納豆臭と同じカテゴリーに属するものなのだが、比べものにならないほどの破壊力があり、下手をすると命を落とす人すら出てしまう恐れがあるほど強烈なものだった。

そんなギネスブックにも登録されてもおかしくない世界レベルの臭いとは別に、僕ら販売員たちを驚かせた臭いがあった。

 

ある週末の閉店後、いつものように片付けに追われていた。5人で一つのフロアーを片付ける。各々が担当するセクションの洋服をたたんでいく。そして終わった人からパックのコーナーに集まる。この日もいつも通り全員がパックのコーナーに集まった。

相変わらずものすごい量のシャツがパックから解き放たれていて、ため息が出る。パックの正しい開け方を知らないのか、引き裂かれているパックもあった。下手すりゃ器物破損で訴えられるんじゃないかっていう。それでも我々は一生懸命に元の状態に戻そうと片付けていく。

すると突然、ディーノ(ギリシャ系イギリス人)が大声を上げた。(ディーノは僕と共にパワハラ上司から目をつけられていた哀れな同僚である。)

何事かとディーノの元へと歩み寄る我々。「臭いが…」と、今にも吐きそうな顔で手渡してきた一枚のシャツ。どうやらこのシャツが原因のようだ。恐る恐る臭いを嗅いでみた。というか、手渡された時点で薄っすらと臭っていたのだが、しっかりと臭いを嗅いでみた。

「うわぁっ!」

思わず声を上げてしまう。とにかく臭かったのだが、ただ臭いだけではない。なんと、そのシャツはカレー味になっていたのだ。

この臭いがあればご飯何杯でもいけるんじゃないかってくらい、カレーの臭いが染み付いていた。(自分で言っておきながら、想像しただけで何杯でも吐けそうな例えだ。)

試着しただけでここまでカレーの臭いにできる人がこの世に存在するなんて…。やはり世界は日本人が思っているよりもはるかに広い。

結局そのカレー味のするシャツはたたむことすらできず、グチャグチャのまま袋に詰め込まれ、マネージャーの元へと連れて行かれた。そして、そいつが売り場に戻ってくること二度となかった。

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