人間、まだまだ捨てたもんじゃない。

2011年3月。

ポルトガルの首都・リスボンを観光していたら、黒人の女性に声をかけられた。

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お腹に赤ちゃんを身ごもった彼女は南アフリカから観光しに来たとのこと。

そんな状態でよく観光なんかに来れたもんだなと思ってしまうほど、彼女のお腹は大きかった。

 

暇だったのでロンドンで培った英語力を駆使しながら彼女と話をしていると、空港に荷物を取りに行かないといけないという話をしてきた。

どうやら南アフリカから一緒に飛行機に乗ってきたはずの荷物と行き別れてしまったらしい。

 

「お腹に赤ちゃんがいるのに大変だね」

なんてたわいもない話で盛り上がった。

 

するといきなり、

「現金が足りないからお金を貸してくれないか」

というお願いをしてきたのだ。

 

 

えっ!?

と思いつつも、意外と冷静に状況を見ることができていた自分に鳥肌。

 

あ、これ詐欺の人じゃん。

 

詐欺師にしては唐突すぎるでしょ。

 

逆に、新手の詐欺の手法なの、これ?

 

見ず知らずの他人から、そんな唐突なお願いされてお金を貸してくれる人なんていると思ってるの?

 

世の中そんな甘かねーぞ!

 

と、99%の確率で詐欺師だと確信しつつも、お金を貸してあげることに決めた。

 

その理由は、20日ほど前に起きた東日本大震災で困っている人がたくさんいるのに、何も貢献することのできない無力な自分がいて、せめて自分の近くで困っている人だけでも助けてあげたい、と思ったのが一つ。

もう一つは、ミラノでサッカーのチケットを買おうとしたときにイタリア人から受けた仕打ちによって人間というものに失望してしまったので、この見ず知らずの女性にお金を貸し、返してもらうことによって「人間まだまだ捨てたもんじゃないな!」と思いたかったからだ。

つまり、ちょっとしたエゴと、1%の確率のギャンブルのためにお金を貸すことにしたのだ。

 

正直、路面電車に乗りたかったけどケチって乗らなかったくらいの貧乏バックパッカーである僕にとって、50ユーロという金額は大金である。

でも、1%という低いの可能性に賭けてでも、僕の中に染み付いてしまった人間の醜さというものをどうしても取り除きたかった。

 

僕は彼女の名前すら聞かずに50ユーロを手渡し、21時にホステルの前で待ってるとだけ告げ、クールにその場を後にした。

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そして、約束の21時。

 

ほとんど諦めつつも、わずか1%の可能性を信じて待ち合わせ場所であるホステルの前で待つ僕。

しかし、約束の時間になっても彼女は現れなかった。

 

やっぱりそうなるよね。

そもそも見ず知らずの他人に名前すら聞かずにお金貸すなんてありえないから。

 

50ユーロも貸すんだったら、せめて名前を教えてもらい写真でも撮らせてもらうくらいしても良かったんじゃないか。

一日一食生活も余儀なくされていた僕にとって、50ユーロは大金以外の何物でもなかったのだから。

いま思うと本当に馬鹿だったな。

 

これを読んでくださっている方、海外で見ず知らずの外国人にお金なんて貸しちゃダメですよ。

 

 

 

 

 

 

 

 

と見せかけてからの、10分遅れで彼女到着。

 

ほらね、世の中悪い人ばかりじゃないんだ。

この瞬間、本当に救われた気持ちになった。

「人間まだまだ捨てたもんじゃないな!」と思うことに無事成功したのだ。

 

 

遅れて現れた彼女の手には見たこともない現金が握られていて、その現金を両替するために彼女が泊まるホテルまでパスポートを取りにいくことになった。

 

彼女が泊まるホテルは驚くほど荒びれていて、僕が泊まるホステルの方が圧倒的に綺麗だった。

 

彼女は僕にその汚いホテルの前で待つように告げて、一人ホテルの中へと入っていった。

 

待つこと数分、浮かない顔をして戻ってくる彼女。

どうやらパスポートをデポジットとして預けていたようで、パスポートを返してもらうには宿泊費を前払いしないといけないとのこと。

前払いしないといけない額は50ユーロ。

「こんな汚いホテルに50ユーロって、何泊分の宿代だよ!」

と心の中でツッコミつつも、パスポートがないと南アフリカのお金は両替してもらえないと言うので、一時的に50ユーロを貸すことに。

 

これで100ユーロという大金を名前すら知らない女性に貸したことになった。

 

それから待つこと10分。

 

なかなか彼女が戻ってこない。

 

 

15分、20分待っても戻ってこない。

 

嫌な予感がする。

 

 

30分を過ぎてさすがにおかしいなと思ったとき、近くにあったレストランからおじさんが出てきた。

そして、彼は僕に向かってこう言い放った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「彼女、詐欺師だよ。」

 

 

・・・

 

 

完全に時が止まった。

おそらく時が止まったのは、僕の人生でこれが初めてのことだった。

 

彼曰く、これまでに何度も僕と同じような被害に遭っている人を見てきたとのこと。

こんなことは言いたくないが、確かに自分で自分のことを馬鹿だと思う。

けど、他にも騙されていた人がいたなんて。

 

こんな怪しい人にお金を貸す馬鹿が僕以外にいたなんて…

 

 

「世の中まだまだ捨てたもんじゃないな!」

 

DSC04648

ここがその現場。

どう考えても怪しい場所である。

 

それにしても、一度お金を騙し取った相手の元へ詐欺師が再び戻ってくるなんて…

まさに新手の詐欺手法だ。

 

 

この事件をきっかけに、たとえ貧しそうな物乞いが相手だったとしても、1円すらあげない立派な旅人へと僕が成長していったことは言うまでもないだろう。

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    1件のコメント

    • kkk

      こんばんは。自分も今までたくさん旅してきた中で一度だけ詐欺にあったことがあります。それがリスボンの南アフリカの女です。同じ人かな?2009年の9月のことです。その人は空港まで行きたいけどお金両替できないから貸してくれでした。信じた自分が馬鹿だなと思いました。かなり腹立たしかったので、捕まえたいと思いました。たぶん簡単人捕まえらえるのでは?と思います。

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